小中学生を対象に2015年から2017年にかけて調査を行った「CU特性」に関する論文が8月16日付で国際誌に掲載されましたので報告いたします。
CU特性とは、ニューオリンズ大学のFrick博士が提唱しているCallous-Unemotinal Traitsのことで、ある種の子どもたちが有する「冷淡で非共感的な特性(態度)」を意味します。
今回検証した質問紙はこのCU特性について、国際的に最も広く使用されている尺度であり、欧米では、この尺度の得点が高いと将来的に行為の問題(非行行為、反社会的行為)に発展しやすいことが報告されていました。
また、CU特性の高い子どもは、将来的に反社会的な問題に至りやすいだけでなく、精神疾患の罹患率も高く、さらに心理療法の効果が薄いことも報告されており、それらの傾向を幼少期に把握して、早期の支援に繋げる取り組みが望まれているところでした。
我が国では海外で作られたCU特性に関する質問紙の有効性が確認されておりませんでしたので、大規模な縦断的調査から検証を行いました。
結果として、我が国においても国際的に使用されているCU特性の質問項目が有効であることを確認することができました。
具体的には、2015年度の保護者調査において、小学1年生から中学1年生)7,596人のCU特性を把握し、2年間追ったところ、CU特性の高さが1年後と2年後の「行為の問題の多さ」や「社会的に望ましい行動(人に親切にするなどの向社会性)の低さ」を予測することがわかりました。
我が国においても、今後この質問紙を用いて、CU特性と子どもが置かれている環境や遺伝的な影響との関連を調べることによって、子どもたちが反社会的行為に走ることなく成長できる環境整備に活用されることが期待されます。
Yoshida S, Adachi M, Takahashi M, Takanyanagi N, Yasuda S, et al. (2019) The factor structure and construct validity of the parent-reported Inventory of Callous-Unemotional Traits among school-aged children and adolescents. PLOS ONE 14(8): e0221046. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0221046
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0221046